FreeCASはなぜ違法?B-CASに群がる巨大利権との関連とは?

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先日、FreeCASを配布していた少年の逮捕について、以下のまとめ記事を書きました。

» 天才少年ではなかった!B-CASエミュ「FreeCAS」事件を1からまとめてみた。

まとめると、

  • FreeCASはSoftCASを焼き直したもので「天才少年が独自に開発した新たな手口」ではない。
  • 警察は、少年が「独自開発」したことにして、B-CASカードをハックした犯人を捕まえていないことを隠したいのではないか?

という内容でした。

今回は、「FreeCASがどう違法なのか」について調べた上で、「B-CAS利権」との関係についてまとめました。

以下、目次です。

FreeCASは技術的制限手段回避装置?
FreeCASを公開した目的は?
著作権法にも違反か
電磁的記録不正作出及び供用罪(刑法第161条の2)に問えるか?
無料チャンネルの視聴にB-CASカードが必要な理由は「利権」
SoftCASによる無料チャンネルの視聴は「無視」されそう

FreeCASは技術的制限手段回避装置?

少年の容疑は「不正競争防止法違反(技術的制限手段回避装置の提供)」でした。

» 不正競争防止法のB-CAS関連条文はこちら(別のタブで開きます)

つまり、FreeCASは「技術的制限手段回避装置」だとみられている、ということです。

B-CASは暗号を利用した「限定受信システム」ですので、「技術的制限手段」です。

FreeCASは、この「技術的制限手段」を回避するプログラムだ、ということになります。

まずFreeCASには、B-CASカード内の非公開アルゴリズムで暗号化を解除(復号)する機能があります。
これは、ヤキソバンが晒したソースコードが元になっています。

このアルゴリズムには、復号するための暗号鍵(ワーク鍵、Kw)が必要です。
(※B-CASのシステムではKwの他にも暗号鍵が使われますが、ここでは話を簡単にするため直接関係するKwだけを取り上げています。)

SoftCASには、有料放送局を含む各放送局の暗号鍵(Kw)が内蔵されていました。よって、「技術的制限手段回避装置」であると言えるかもしれません。

一方、FreeCASには主要な放送局の暗号鍵(Kw)が内蔵されていません。ユーザーが別のファイルで設定するしくみです。

少年は、「暗号鍵はユーザーが設定するのだから、たぶんセーフ」と考えていたようです。

ですが、そもそもB-CASのシステムでは、暗号鍵(Kw)やその利用期限といった情報は、放送波に含まれる別の鍵で暗号化された情報により設定、更新されるよう設計されています。

それをユーザー自身が設定できるようにしたこと、そして、有料放送をタダ見するための暗号鍵(Kw)がネット上で容易に見つかることから、FreeCASも「技術的制限手段回避装置」と判断されたのでしょう。

ただし、FreeCASやSoftCASは単体で動作するものではなく、他のフリーソフトと合わせて初めてデジタルテレビ放送の視聴や録画が可能となるものです。
FreeCASのような、いわば「部品」を、「技術的制限手段回避装置」であると言えるかどうかは、裁判上の争点になるかもしれません。

FreeCASを公開した目的は?

だだし、「技術的制限手段回避装置の提供」だけで刑事罰の対象となるわけではありません。

条文にある通り、「不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的」である場合にのみ罰則が規定されています。

FreeCASは無料で配布されていたため、「不正の利益を得る目的」が主目的ではないように思われます。
ただし、寄付を募っていたことから「不正の利益を得る目的」があったとされる可能性はあります。

「技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的」については、どうも「B-CAS社に損害を与える目的」だったとも言えそうです。
これは、B-CASカードを書き換えるツールをファイル共有ソフトで放流することが、「B-CAS社に損害を与える目的」だったとする判例があるためです。
しかしながら、明確に「損害を加える目的」があったかどうかについては争う余地があるように思います。

いずれにせよ、警察が逮捕に踏み切ったということは、目的についても立証する自信があるものと思われます。

著作権法にも違反か

ここまで、報道されている「不正競争防止法違反」について見てきましたが、「著作権法」との関係はどうでしょうか。

» 著作権法のB-CAS関連条文はこちら(別のタブで開きます)

2012年10月の改正著作権法施行により、暗号による技術的保護手段の回避を可能とする装置やプログラムを配布することが違法となりました。

FreeCASは、これに当てはまる可能性が高そうです。

しかも、こちらは不正競争防止法と異なり、目的が要件にはなっていません。

であれば、不正競争防止法違反だけではなく、著作権法違反ということにもなりそうですが、現段階で報道されているのは不正競争防止法違反容疑のみです。

何らかの理由で著作権法違反に問えないのか、それとも著作権法違反についても問われるのか、今後の推移が注目されます。

電磁的記録不正作出及び供用罪(刑法第161条の2)に問えるか?

» 刑法のB-CAS関連条文はこちら(別のタブで開きます)

2012年の「不正改ざんB-CASカード」関連事件をめぐる複数の判決で、B-CASカードを書き換えること、および書き換えられたB-CASカードで不正に有料放送を視聴することが「電磁的記録不正作出及び供用罪」にあたるとされました。

条文中の「人の事務処理」については、書き換えたB-CASカードを用いて有料放送を不正に無料で視聴した被告が、検察に「衛星放送事業者の適切な視聴料の徴収事務を誤らせた」と指摘され、有罪となった例がありました。

FreeCASを用いれば、「視聴料の徴収事務を誤らせる」ことができるわけですから、同じように電磁的記録不正作出罪に問われる可能性は十分あるように思われます。

「無料チャンネル限定のSoftCAS(FreeCAS)」を配布すると違法?

報道では、「有料放送を無料で見られる不正プログラムをインターネットで公開したとして、不正競争防止法違反の疑いで少年を逮捕」と報道されています。
しかしながら、SoftCASやFreeCASはB-CASカード無しで地デジやBSなどの無料チャンネルを視聴するために使うこともできます。
この場合、ダビング10やコピーワンスのようなコピー制御がきかなくなりますが、これらは法的根拠のないARIB(電波産業会)の規格にすぎないので、違法ではありません。
ならば、「無料チャンネル限定のSoftCAS」を作成し、無料で配布した場合は違法ではないのでしょうか?

「不正競争防止法」については、もし「無料チャンネル限定のSoftCAS」が「技術的制限手段回避装置」であると認められたとしても、無料で配布していれば「不正の利益を得る目的」があるとは言えないでしょう。
また、公共性の高い地デジやBSといった無料チャンネルが見られるだけならば「技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的」があるとも言えないように思われます。
よって、「不正競争防止法違反」に問うことは難しいのではないでしょうか。

次に、「著作権法」です。
前述の通り、2012年の改正により、暗号による技術的保護手段の回避を可能とする装置やプログラムを配布することが違法となりました。
不正競争防止法と異なり、目的は要件ではないので、こちらは違反となり、刑事罰の対象となってもおかしくないように思われます。
なお、使用についても著作権法違反となります。ただし、刑事罰の定めはありません(DVDのリッピングと同じ)。

最後に、「刑法(電磁的記録不正作出及び供用罪)」です。
条文中の「人の事務処理」を「視聴料の徴収事務」と考えれば、無料放送には関係がないことになります。

あるいは、「放送波を暗号鍵をつかって復号すること自体」を「事務処理」と見ることもできるかもしれません。
しかしながら、「貸与」されているという建前のB-CASカードを用いているならまだしも、自らのPC内で復号処理を行っているのですから、「人の」事務処理とするのは苦しいでしょう。

となると、電磁的記録不正作出及び供用罪に問うのは難しいように思われます。

まとめると、以下のようになります。

「無料チャンネル限定のSoftCAS」を日本国内で作成・配布した場合

  • 不正競争防止法違反に問うのは難しそう
  • 著作権法違反になる可能性はある
  • 電磁的記録不正作出及び供用罪に問うのは難しそう

「無料チャンネル限定のSoftCAS」を利用した場合

  • 著作権法違反になる可能性はあるが、刑事罰の規定はない。
    (もちろん録画したものを無断で公開した場合は、著作権侵害で訴えられる可能性があります。)

無料チャンネルの視聴にB-CASカードが必要な理由は「利権」

そもそも、なぜ無料チャンネルの視聴に、B-CASカードが必要なのでしょうか。

B-CASのような「限定受信方式」が無料チャンネルにまで用いられている国など、日本以外にありません。
本来、私的なコピーは著作権法で許されており、公共性の高いテレビ放送を私的にコピーすることは国民の権利であると言えます。

実際、アメリカやスウェーデンでも、デジタル番組の保存やコピーなどの禁止フラグに対応するよう各種機器に義務づける計画がありましたが、裁判所により「視聴者の権利を侵す」として却下されています。
公共の放送については、視聴者の私的複製を最大限認めるというのが世界の常識です。

ところが日本では、NHKや民放などの放送局は、どうしてもデジタルテレビ放送のコピーを制限したいと考えました。
しかし、法律的に縛るとなると、アメリカやスウェーデンのように裁判所に却下される可能性があります。

そこで、NHKと民放各社、総務省や関連法人が談合して放送波を暗号化し、B-CASカードがないと公共のテレビ放送が見られないようにすることになりました。
そして、B-CASカードを発行するのはB-CAS社が一社で独占。ダビング10に対応した機器にのみB-CASカードを供給し、さらにB-CASカードはコピー制限のある機器でしか使ってはいけないという「契約」により制限するという仕組みです。
この、B-CAS社が独占的にB-CASカードを発行するという状態は、独占禁止法違反ではないかともいわれています。

さらに、B-CASカード対応機器が売れると、デジタル放送推進協会(Dpa、現・放送サービス高度化推進協会)やB-CAS社にカード代や手数料が入る仕組みが作られました。
ほとんどすべての世帯に複数のB-CASカード対応機器があることを考えれば、膨大な金額になることが分かるでしょう。
B-CAS社の2004年以降の売上高の総合計は、1000億円を超えます。

この仕組みは、総務省やNHKなどからの天下り先を維持し、関連企業にカネをばらまくために利用されています。

まず、B-CAS社の筆頭株主はNHKで、社長もNHKのOBです。

さらに、B-CASシステムを支える2つの一般社団法人には多額のカネが集められてきました。

1つが、一般社団法人「電波産業会(ARIB)」です。こちらは、B-CASシステムを含むデジタル放送の規格を策定しています。

もう1つが、前述の一般社団法人「デジタル放送推進協会(Dpa)」(2016年4月より「放送サービス高度化推進協会(A-PAB)」)です。
B-CASカードの売り上げを集めたり、B-CASカードに対応した機器を認証したりなど、B-CASに関連する売り上げはこの法人に集まる仕組みになっています。
なお、Dpa(現・A-PAB)に投入された補助金は、2008年から2014年までの合計で1500億円にのぼります。

これらの法人は、デジタル放送に関するさまざまな業務を、独占的に国から請け負ってきました。
そして、これらの法人に会費や分担金などを払わなければ、日本でデジタル放送に関連するビジネスをすることは事実上不可能となっています。

今後は4K・8Kの普及という名目で、さらに多くの企業からカネを集め、国のカネも補助金として投入されていくのでしょう。
補助金を投入すれば国民の負担は増しますし、企業からカネを集めれば商品やサービスに転嫁されて国民の負担が増します。

これらの一般社団法人は、総務省の官僚OB、NHK、民放、家電メーカーの幹部クラスなどが役員となってきた「天下り団体」です。

つまり、天下り団体に多くの金を集めるために、無料チャンネルの視聴にもB-CASカードを必要とする世界に類を見ない規格を定め、全家庭にB-CASカードの費用を負担させる(ただし機器代に乗っているので「一般国民」は気づきにくい)ということが行われてきました。
いわば、国民のカネをかすめとることで、天下り団体はカードの発行で潤い、国からの補助金で潤い、企業からカネを集めて潤い、そのカネが天下りしてきた総務省の官僚OB、NHKや民放、各メーカーの役員の懐に入り、関連企業にカネをばらまく、という利権構造が維持されています。

SoftCASによる無料チャンネルの視聴は「無視」されそう

今回、FreeCASを配布した少年の報道では、「B-CASカード不要で有料放送を視聴できる」ことのみが問題とされています。

FreeCASを使えば、B-CASカード不要で無料放送が視聴できますし、ダビング10のようなコピー制御を無視することができます。

そして、日本国内で無料放送限定のFreeCAS・SoftCASを配布することは、著作権法違反にあたり、刑事罰の対象となる可能性もあります。

しかしながら、B-CAS社やA-PABが「無料放送の視聴・録画に限定されたB-CASエミュレータ(SoftCAS)の配布や使用」に対し、被害届を出すなどの法的措置を取る可能性は低いと考えられます。

これは、もし「無料放送が暗号化されていること自体が国民の権利を侵害している」とされた場合、利権に巣くう人々にとって困ったことになるためです。
他国の例をみると、「無料放送を暗号化していること」を司法の場に持ち込みたいとは思わないでしょう。

また、B-CASシステム自体が、独占禁止法や放送法に違反するのではないか、といった問題が法廷や報道で取り上げられてしまう可能性もあります。

彼らの利権構造を維持するためには、あえて問題を表面化させず、グレーにしておくほうが得策であることは明らかでしょう。

そのため、SoftCASによる無料チャンネルの視聴は「無視」されつづける可能性が高い、と考えられます。

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